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ラジオ用番外編
 
智一・美樹のラジオビッグバン』(日曜日:25:30〜26:00 / 文化放送) の番組内で、関智一さんが朗読しているものをテキストにまとめたものです。
 
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シュラキ外伝 「木漏れ日の神子(かみこ)」

9月16日放送分@ : 第 十六 話

 

「伽乃…俺の家に行こう」

「えっっ…」

思わず口から出た。言った後で自分が驚いた。伽乃はポカンと口を空けてこちらを見ていた。

「えっ…あっ…いやっ、その…そういう意味じゃなくて…えと」

「…ふっ…くくっ…あははっ。主も…ふふっ。あははっ。いい加減、愚かな男じゃ。
自ら面倒ごとに首を突っ込みおって」

「そ、そんな言い方はないじゃないか…お、俺はただ…」

少しばかり古書を拝借した後で私達は身支度を整え、彼女の実家である神社を後にした。
境内と村を繋げる長い階段を下っていると、後ろから呼び止められる。

「と、伽乃様!戻られたばかりなのに、どうしてまた!?」

「お前も仕方のない子じゃ。昔から一族の古いシキタリに囚われて、甲斐甲斐しく私の世話を
しようとする。だが、もう良いのじゃ。妾の事は忘れて、村で大人しく暮らすが良い」

「そ、そんな…伽乃様…」

「おい。いいのか?泣いているぞ」

「もう金輪際会う事はない。関わったのが運の尽きなのじゃ」

今のは、あの娘に向けて言った言葉なのだろうか。
そして今わざわざ伽乃がこの地を訪れた意味はなんだったのか。想像するだけで私は胸が詰まった。
だがここで立ち止まるわけには行かない。私達は再び旅立った。
森を抜け山を越え、わが故郷を目指した。

「いつも…考えていた…」

夜半過ぎ、電車に乗っていた時だった。一寸先も見えない窓の向こうの暗がりを見ながら、伽乃はボソリと呟いた。
駐留軍の移動やら疎開する集団と同じ列車に乗り合わせてしまったのか、周囲は夜中にも関わらずザワついていた。
人ごみに紛れるにはちょうど良かった。

「妾が呼び起こすのは朱羅姫同士の殺し合い・焔舞だけではない。
常に争いの渦中にある。そして関わる者を皆不幸にする。そう運命付けられた人外の存在、それが朱羅姫。
いつか焔舞によって、自らの命を絶たれるんじゃと」

「…むぅ…」

「だからこそ思うのだよ。この胸に焼きついた重い楔が、どれほど人間らしく、どれほど…いとおしいのだろう、と」

伽乃は自らの胸に手を当てて、一人反芻するように呟いた。
 

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