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『智一・美樹のラジオビッグバン』(日曜日:25:30〜26:00 / 文化放送) の番組内で、関智一さんが朗読しているものをテキストにまとめたものです。 |
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シュラキ外伝 「木漏れ日の神子(かみこ)」
8月19日放送分 : 第 十三 話 |
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朱羅姫。舞い踊るように闘う、朱色の姫。一族の中で朱羅姫に目覚めるのは女性のみ。
武器・神薙の刃(かんなぎのやいば)を手に取り、衣装・天涙の衣(てんるいのころも)を
身に纏い、互いに戦い合う女達。
あの場から逃げ出す時、遠めに焼き付いていた伽乃の姿に、その言葉が相応しいと思った。
あの時彼女が背中取り出していた棒状のものは、武器だったのだろうか。
「しゅら…き」
「なんじゃ…知っておったのか」
「と、伽乃?」
あの場に戻ろうと決心したその時、茂みの暗がりからフラリと姿を現したのは、伽乃本人であった。
「お、お前いつの間に!?それよりも、だ、大丈夫だったのか?」
「ふふん。だから私は」
彼女は鼻で笑うと、心配する私など意に介さない様子でいつもの台詞を吐いた。
自分は無敵だと。これまで伽乃は、度々傷を追い、血を流していた事があった。
よくも抜け抜けとそんな事が言えるものだ。
「なぁ。そろそろ話してくれて、いいだろう?」
「ん?知っているような口ぶりだったのは、お前の方ではないか」
「私はこれまで研究機関で、日本の古来から根付く伝承を調査していたんだ。
そこで知ったのが、朱羅姫と朧神の話だった、というだけさ」
「ふむ…なるほど、何の因果かのう…」
伽乃は花壇に咲き始めた紫陽花に目を向け、一人頷きながら呟いた。
なかなか口を開こうとしない。
「…あの軍服の女も、朱羅姫、なのか?」
「あれは一族の末端、朱羅姫などではない。政府の犬に過ぎんわ」
「じゃあお前はこれまで何と戦い、傷ついてきたんだ?」
「…知らぬ方が良いと言ったではないか。まぁもう手遅れ、か」
ようやく諦めがついたのだろう。彼女の口が開こうとした矢先。
「ごほっ!ごほっ…!くっ…」
急に咳き込み出した。押さえる掌に落ちたのは、紛う事無き鮮血の朱色であった。
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